「水都モデル」への挑戦

(5)市民エネルギーと未来社会へのデザイン!

            =NPO法人大阪再生プラットフォーム役員 室井明(記)=

大阪は、古来より「水の都」であった。豊富な資産に加え、活力旺盛な市民の存在など大阪は高い潜在力がある。「水の都」のポテンシャルを生かし、水都大阪を再生させる「水都モデル」を創り出すことが、都市間競争時代の大阪の生き残り策である。今回(最終回)は、「水都モデル」構築の鍵となる「市民エネルギー」について書く。市民参加・市民協働の時代と言われているが、市民力をまちづくりに生かすための「仕組み」をつくることが極めて重要である。

「市民」には、一般市民、地域住民、NPO、企業市民が包括される。また、地域の活動団体や建築家・アーテスト等も含まれる。彼らのアイデアや熱意、創造力、突破力がまちの変革に大きなパワーとなる。私は、以前「水都大阪2009事務局長」を務めたことがあるが、大阪には、NPOや市民グループなど実力のある「市民」が多く存在することを実感した。資金的問題は抱えつつも創造的で底力のある活動を続けている。大阪人は独立心が強く誇りも高い。それだけにパワフルであり、彼らのエネルギーをまちづくりに生かすことが、東京の官に対して「民のまち」と言われた大阪の再生のキーになる。

市民エネルギーを生かすまちづくりの「仕組み」のポイントは以下である。

まず、「価値感の共有」。水都ブランドの確立という価値感の共有が「仕組みづくり」の出発点になる。次いで、「実績の積み上げ」。大阪では新しい市民参加スキームが続々と誕生し、全国からも注目されている。独創的・啓発的な業績に対して贈られる日本都市計画学会石川賞を「水都大阪のまちづくり」が2015年に受賞したが、まちづくりにとって大事な信頼関係が実績の積み上げにより醸成される効果は想像以上である。

最後に、「場の存在」。私は、「リアルの場」と「バーチャルの場」の二つの協働の場の創設を提案したい。「リアルの場」の重要性は以前から指摘されているが、行政、経済界、市民代表が一堂に会した会議体のイメージである。当然のことながら透明性、公開性、公平性が担保された会議体でなければならない。オープンな意思決定の場の存在が、活力あるまちをつくるためには必要不可欠である。今後重要性が増すのが、ICT時代にふさわしい「バーチャルな場」である。ニューヨーク市のNYC311や、テキサス州メイナー市の地域通貨イノバックが、情報通信技術を活用した市民参加手法により都市や地域を変革した事例が報告されているが、世界的にはまだ試行錯誤状態にある。本格的な取り組みはこれからであり、大阪が取り組む意義は大きい。

昨年11月のBIE総会で大阪の2025年の国際博覧会(万博)が決定した。会場となるのは夢洲であり、まさに「水都大阪」の現場である。2005年の愛知万博では、「万博と市民参加」という命題が惹起されたが、来たる大阪万博では、「市民力とまちづくり」をテーマとする実験場を創り、20年前の命題に対する答を出すべきであろう。「リアルとバーチャルのプラットフォームを組み込んだまちづくり実験」、チャレンジに値するテーマである。「水都モデルへの挑戦」が、未来社会へのデザイニングに繋がる。(完:第5回最終)