時事随想 「ライドシェアについて」
最近、ライドシェアが話題に上がるようになってきた。コロンブス
2023.12月号にライドシェア特集が掲載されていたが、その内容から抜粋しながら、私見を加えつつ日本は10年遅れているといわれるライドシェアについて一緒に考えてみたい。
タクシー・バス業界の人手不足は深刻だ。運転手の高齢化にコロナ禍が追い打ちをかけ、都市でも地方でもタクシーになかなか乗れない光景をよく見かける。そのような状況下でライドシェアが注目されている訳だが、一口にライドシシェアと言っても、様々のタイプがある
一つは、TNC(Transportation Network Company)と言われる「自らは実際の搬送をやらずにスマホアプリなどを使いプラットフォームを作る事業者」である。米国のUberや中国の滴滴出行(DiDi)等で、世界の主流がこのタイプ。いわゆる白タクだが、日本では、白タクは道路運送法で禁止されており、このタイプのライドシェアにはタクシー業界が猛反対している。
そこで日本で導入されたのが、いわゆる「日本版ライドシェア」。今年の4月から東京、大阪、神戸など都市部で運用開始された。Uberとは異なり、タクシー会社の管理下で運営される方法を採ったため、既存運送者と利用者ニーズとがどこで折り合うかが成否の鍵を握る。運転手の収入、運賃、安全の担保、事故時の補償、運転手の質の確保など課題は多い。いずれにせよ、始まったばかりで評価は未知数である。
ところで、日本には、別のタイプのライドシェアが以前から存在するのを知っていますか?「自家用有償旅客運送事業」と、舌を噛むような名前が付いているものだ。過疎地のタクシー空白地帯解消や福祉対策等に限定して認められているものだが、2006年道路交通法の改正で、すでに制度化されている。知名度が低いのは、それだけ実施のハードルが高く、実用化も限定的ということだろう。最近、「自治体ライドシェア研究会」が立ち上がったと報じられてはいるが、過疎地対策への基本的スタンスが求められている。
ライドシェアの議論には、ドライバー不足問題、地方における足の確保など目前の課題解決も勿論大事だが、ライドシェアは自動運転までのつなぎであるとの意見もあり、将来のモビリテイ像を描くことが大変重要である。また、過疎地では、人流・物流を含む全体スキームをどう描くかも重要になる。ライドシェアは我々の日常生活の問題だけでなく、シェアリングエコノミー、情報通信技術、日本の産業競争力にも密接に関係する重大な課題であることに間違いはない。 2024.6 A.M