書評 「コミュニティデザインの現代史」饗庭伸、山崎亮著 学芸出版社 2024
高度成長を経て住環境への関心が高まった70年前後から、革新自治体を中心に街づくりに住民が加わるようになる。
本書は都市計画家である饗庭伸さんとコミュニティデザイナー山崎亮さんの往復書簡で主に1970年代から90年代を振り返り都市計画の思想や手法の変遷をたどる街づくり史。
市民参加型まちづくりの歴史を辿りながら時代を築いたキーパーソンを訪ねインタビュー。
行政が策定する都市計画に市民が参加するようになり、呼び方も柔らかいまちづくりへ。最近では横文字でコミュニティデザインとも呼ばれる。いずれもすべてを言い表せているのではなく、重なり合ったり補完しあったりする呼び方だと思う。
この界隈のトップランナーと呼べる自治体は横浜・神戸・世田谷だろう。早期に都市デザイン室など専任部署を立ち上げ、まちづくりファンド・まちづくりセンター・まちづくり条例の3点セットの原型を築きあげた。多くのキーパーソンも輩出している。
大御所・林泰義さんをはじめ、浅海義治さん、木下勇さんといった、学生時代に薫陶を受けたまちづくりのレジェンド達を訪問して記録を残した本書は、後世に伝えるべき貴重な学術資料となるだろう。
目次
1章コミュニテイデザインの歴史が気になる
2章 パイオニアたちに会いに行こう
パイオニア訪問記1 林 泰義さん
3章 70年代、町田や世田谷で起こっていた面白そうなこと
4章 コミュニティ計画を突き詰めた神戸へ
パイオニア訪問記2 乾 亨さん
5章 コミュニティ計画が描いたもの
パイオニア訪問記3 小林 郁雄さん
6章 まちづくり事務所の経営について考える
パイオニア訪問記4 浅海 義治さん
7章 何のためのワークショップ?
パイオニア訪問記5 木下 勇さん
8章 なぜ僕らはワークショップをするんだろう
2024.11 清水治彦